「バングウ」・「クリシュナ」

(写真は、第8艦隊旗艦「クリシュナ」)

アイアース級は、建造当初の同盟軍の国力と艦隊編成において、旗艦として十分な性能であったが、帝国の「総旗艦」に相当する艦は建造されてこなかった。最前線における更なる艦隊運営の効率化を図るために、アイアース級を拡張する形で設計されたのがバングウである。しかし、多数の幹部要員及び会議室といった地上施設全てを限られたスペースに収容するには、艦内容量が中途半端なため、更なる拡張を図ったのがクリシュナである。巨大なシルエットに見合う十分な冗長性を有しているため、艦首主砲も60門という同盟軍史上最大の火力を有するにいたった。もっとも、設計当初の予想を遥かに上回る建造費には軍首脳陣の中にも、反対するものが続出した。これを受け、アイアース級等在来型の旗艦クラスの指揮設備の更新や省力化により確保された艦内スペースに司令部施設を割り当てる方向で旗艦性能を向上する計画が実施された。結果、相応の指揮能力の向上が実現した上、そもそも、アイアース級の指揮能力を超える規模の大艦隊が編成されなかったこともあり、この2隻以降、総旗艦タイプの建造は見送られた。この2隻についても、通常任務では過大ともいえる設備の維持コスト削減の為、建造当初装備されていた総旗艦設備の多くは、近代化改装の際に取り除かれている。羽陽曲折を経て、第8艦隊と第10艦隊の旗艦を務める彼女たちであるが、その後、捕獲した帝国軍旗艦や捕虜からの情報により、帝国の「総旗艦」は、完全に見掛け倒しであり、「ブリュンヒルト」や「ベルヘルミナ」でさえ、少なくとも「旗艦」としての性能は、標準型戦艦に毛の生えた程度しかないことが判明し、造船関係者たちを唖然とさせたという。